【中編】ひとつの愛
「山口さん、これ橘先生の判抜けてるんだけど」
「え? あ、これは会計の……休みですか?」
放課後、生徒会をさすがにサボる事の出来なかった私は、雑務をこなしていた。
先生の姿はなくてホッとしていたのもつかの間。
会長から手渡されたプリントには橘先生の判が抜けていたんだ。
担当の会計は風邪で休み。
会長に頼まれた私は、重い足で職員室へと向かっている。
モヤモヤした黒い霧でもかかったような心の中。
とは裏腹に、ドキドキと高鳴る心臓。
自分で自分の気持ちがわからない。