【中編】ひとつの愛
前にも後にも。
どこへも行けない私がいる。
擦れ違っただけで、嬉しくなって。
“先生”そう呼ぶだけで、距離を感じて。
誰かに言ってしまいたくなる。
先生が好きなの。
だけど、先生を困らせるセリフを口になんて出せない。
例え、バレていたとしても。
私は先生を好きじゃない、そう言うんだ。
あの時、終った。
あの時、蓋をした。
なのに、どうして?
お願い。
開いてしまった蓋を。
終ったと嘘をついていた想いを。
硬く閉めて、誰も知らない場所へと埋めたいんだ。