【中編】ひとつの愛
「冗談ですか。
驚きましたよ?」
「すみません」
もう一度謝ると『最近、彼と上手くいっていなくて。つい』なんて笑った。
吸い終わった煙草を俺の携帯灰皿へと押し付け、大人の女性の笑みを残し非常階段を後にした。
前田先生、男いたんだ。
まぁ、あれだけ美人ならいて当然だな。
そう思いながら、また空を見上げた。
自分から距離を置く事がこんなにも苦しいものだなんて知らなかったな。
あーぁ。
何で教師になんかなっちまったんだろー。
もう1本、煙草を取り出し火を点けた。