【中編】ひとつの愛
角を曲がれば保健室。
勢いよく曲がった俺の目に飛び込んで来たのは、流湖を抱えた、栗野の姿だった。
「あ、先生」
その一言に、乱れた息を整えるかのように大きく息を吸った。
「あ……あぁ。鍵だろ?」
「はい、すみません。
お願いします」
冷静を保つふりをしながらも、鍵をもつ手が微かに震えている気がする。
「顔色が悪いな」
そう呟いた俺を、流湖をベットへと寝かした栗野が俺を見つめる。
「最近、何だか変だったんですよ」
「え?」
「授業をサボったりしてましたし」
「……そう」
「先生、何か知りませんか?」
一瞬、驚いた顔をしたのを見られてしまった。
その表情に気付いたのか、
「……気を持たせる様な事は止めて下さい。
苦しんでいる理由は先生のせいですよね?」
そう言うと、
流湖の荷物を取りに行くと保健室を出て行ってしまった。