【中編】ひとつの愛
「そんな……勝手な」
「俺は勝手だよ」
真っ直ぐ前を見て、真剣な顔で言わないでよ。
わけわかんない。
煙草の箱を開け、一本取り出すとライターの火を点けようとした。
運転しながら器用だなー。
見なくてもわかるって感覚かな。
そんな事を思いながら、見ていたら、
「あ、悪い。お前体調悪いんだよな」
そう言って、ライターを元の場所に置こうとする。
「あ、いいですよ。先生の煙草を吸う姿好きだし……」
って!!!
私、何言ってんの?
「いや、あの。その別に見てたとか、そういうのじゃなくて、えっと…」
「ぶはっ。何か、流湖の慌てた姿見るの久しぶりかも」
え?
流湖?
真っ赤な顔で、アタフタしながら焦って何を言ってるかわからない私の時が止まって、隣で運転する先生を真っ直ぐに見詰めた。
「え? 何?」
運転の合間でも、さすがに私がジッと見つめるのがわかったのか、聞いてきた先生。