【中編】ひとつの愛
「最悪……先生」
瞳に涙が溜まっていたのなんてわかってる。
だけど、これだけは言ってやりたかった。
どうしても言いたかった。
じゃなくきゃ悔しい。
こんな最悪な人を好きな自分が悔しくて、情けなくて、哀れ過ぎて。
目を逸らし、車を降りようとした瞬間。
私の体は、意図も簡単に先生の強い腕に引き寄せられ、ギュッと抱きしめられたんだ。
ふわっと香るのは、先生の煙草の匂いと香水の匂い。
どっちもきつくなく、優しく香る匂いだった。
どんなに望んでも、叶わぬ恋ってあるのかな?
好きで好きで好きで。
どうしても止められない想いなのに。
何をしても止まらない想いなのに。
今は駄目な恋。
私が、後少し待てば……そうすれば叶う恋なのかな?
なら、私は待つ。
もう我儘も言わない。
絶対我慢するから。
お願い、先生。
私のこの気持ちを受け止めてくれませんか?