【中編】ひとつの愛
俺の背中にそっと回る細い腕。
え……。
「何かあったんですか?」
優しい声。
「いいよ。先生が落ち着くまでこのままで」
はっ。
子供みたいな駄々をこねた俺をきつく不器用に包む。
でも今は、それが気持ちいい。
「あ……ごめんなさいっ。嫌でしたか?」
ふと顔をあげた流湖は、俺の腕の中で頬を真っ赤に染めた。
「んー。気持ちよかったけど」
「ふぇ?」
「ぶはっ。マヌケな声」
「なっ!」
「お前さっきから言葉になってねーし」
余りにも慌てる流湖が可愛くて、笑ってしまう。
「そっ、それは先生が変だから」
「変?」
コクッと頷き、
「英語の先生と何かあったんですか?」
心配そうな声で聞いてきた。