【中編】ひとつの愛



英語の先生。



前田先生の事が言いたいのか?

前田先生と俺が何かあったから変だと。



「……付き合ってなんかねーから」

「……はぁ?」



少しトーンを落とした声が俺に響いた。



俺は今更、何を言っているんだ?

言う必要なんてないのに……。



「だから、付き合ってなんかないってんの」



だけど、流湖を真っ直ぐ見て強い口調でそう言った。


大きな瞳を更に大きく開き、俺を見上げた流湖はパチッと瞬きをすると、



「あっ、別れた……んですか?」



と切なそうな表情をして顔を上げた。



「……すんなよ」

「え? 今、何て…」

「んな顔すんなっ」



抱きしめた腕に力が入った。



痛い位に抱きしめたはずなのに琉湖は黙ったまま、ジッと動かない。




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