【中編】ひとつの愛
琉湖の肩を両手で押し、今の今まで感じていたいと願った温もりを自ら離した。
「せん…せい?」
「……悪かった。ほら、帰りなさい」
“教師”の俺。
優しく、でも厳しい口調で言う。
俺は“教師”、お前は“生徒”
これは変えられない事実。
流湖が、本気じゃなくても、この関係に酔っていたとしても。
それでもいいから……。
ここまで思う俺は、限界まで来たのか?
これ以上、隠し通せない。
だから、もう俺の中に入って来るな。
助手席のドアが開く音を聞きながら、運転席の窓を開け、煙草を加えて火を点けた。