【中編】ひとつの愛
「ゴホッ……嫌って」
「嫌だから嫌……なんです!」
おいおい。
ドアロックまでし、俯いたまま動かない流湖。
「親御さんも心配するから、な?」
そう宥めるかの様に言った俺の方に顔を向けると、
「親は旅行中です。それに愛姫の家に泊まる予定だったから大丈夫です」
はぁ!?
旅行中なのは、わかるけど。
川合の家に泊まる予定だから大丈夫ってのは何だ?
「先生、私の事……からかってるんですか?」
汚れのない真剣な目で、真っ直ぐに見つめられた俺は逸らす事が出来ない。
だけど、その質問に答えれなかった。