【中編】ひとつの愛
「私……先生が好きです」
そう小さいけれども強い口調で言った後、抱きしめられた。
そして、どれくらい時間が経ったんだろう。
ギュッと力の入ったままの腕は、一向に緩まらない。
先生の温もり、微かな煙草と香水の香り……。
もう少しこのままでもいいかな。
なんて思っている時だった。
「うぁっつー!」
先生の体がビクッとし、そう叫んだと思ったら、抱きしめていた腕は簡単に離れてしまった。
手に持っていた煙草を灰皿へと押し付ける。
あ、そういえば……煙草吸ってたんだっけ。
燃え続けた煙草は、先生の指に到達してしまったらしい。
指を擦りながら『熱い……』って繰り返す姿が面白くて笑ってしまった。