【中編】ひとつの愛
バサバサっと全ての本が落ちた後、静かな時間が流れた。
「あっ、碧君、大丈夫!?」
腕の力を抜き、胸元に抱え込んでいた愛姫を覗いた。
良かった……
怪我はなさそうだな。
「ごっ、ごめんね?」
俺の中にスッポリと入っちまうくらい小さい。
何で、いつからこんなに
女の子なんだよ。
「もう座ってろ」
俺のシャツをギュッて握ってた手を離し、愛姫と距離をおく。
こんなに密着してたら俺の心臓もたねぇから。
何も言わず、ゆっくりと受付へと戻って行く愛姫を見て
ホッとした。
胸が苦しくて、イタイ。
ふわっと香った甘い匂いに酔いそうになる。
思わず抱きしめたくなっちまう。
まだ残る香りに、胸の痛みは中々治まらなかった。