【中編】ひとつの愛
「そうだな……」
少し考えた俺は、
「学校では流湖って呼ばない事と、キスも我慢する事と…」
「って、それって先生だけじゃない」
クスクスと笑う。
「あーそっか。いや、でもお前もキスしたくなるかもよ?」
「しないもんっ」
「しないんだー、へー。前科あるくせにー?」
「あ、あれはっ……」
言葉に詰まった流湖は、絶対真っ赤な顔をして膨れてるんだろな。
見なくてもわかる、それが嬉しかったりする。
「あ、でも隠れてならいいかー」
そう茶化して言った俺に、
「先生、教師のくせに! てか、学校でキスなんてしませんっ」
なんて少し怒った口調。
「だから、俺は最低な失格教師ですけど?」
「そ、そこまで言ってないよ!?」
今度は焦った声。
それが可愛くて。
俺の言葉に一喜一憂するのが可愛くて仕方ない。