【中編】ひとつの愛
「ねぇ、先生」
「んー?」
ベットへと戻った流湖。
布団へと戻った俺。
さっきと違うところと言えば、流湖がベットから伸ばした手を俺が握っている。
「私ね、初めて先生を見た時は何とも思ってなかったんだよ」
初めて流湖と会った時?
入学式か……ん、授業の時か?
「先生作り笑いばっかりしてるんだもん、胡散臭い気がしてさー」
「お前、俺の事、どれだけ胡散臭い野郎だと思ってたんだよ」
「あはは、先生、胡散臭かったよ」
言ってろ。
俺は俺なりにだな、こう教師らしくってーのをだな。
「だけど……」
「……だけど?」
ギュッと握った手に微かに力が入った。
「煙草を吸ってるのを見たんだ、非常階段で」
「あぁ? あそこそんな前からバレてんの?」
あそこはバレてないって思ってたんだよな。
だって、死角になってるし。
それに、非常階段付近なんて誰も通らないだろ。
「その時にね、疲れた顔してるなーって。それで先生が気になったんだよ」
……お前はカウンセラーか。
疲れた顔って。