【中編】ひとつの愛
「ふーん。で、何でそっから好きになるわけ?」
「いつも完璧にしてるフリしてる先生が、たまに見せる素の姿が好きになったの」
「え? 俺そんなの見せてる?」
「うん、たまーにね。誰も気付いてないだろうけどね」
そう言いながら流湖は、少し自慢げに笑った。
そんなところを見られてたんだ。
てか、素の俺って……何だよ。
確かに学校では、目立つと他の教師に色々言われるのがウザイって思ってたけど。
「だから数学だって頑張ったんだよ」
「あー、お前。数学の点いいよなー。あれは関心してた」
「いいんじゃなくて、頑張ってたの!」
グィっと、流湖がベットから下にいる俺を覗き込んだ。
「へー。何だ可愛いとこあるじゃん」
「ちょっとー、先生! その言い方だったら私、いつもは可愛くないみたいじゃない」
そのままの体勢で怒る流湖を宥めるかのように、握った手を軽く振った。
「あー悪い、悪い」
『もう』
って言いながら、またベットへと寝転ぶ。
男と女。
恋人同士。
なんだから、あんまりあおったりしないでくれよな。
教師と生徒。
それがなきゃ、俺……絶対ベットに行ってるって。