【中編】ひとつの愛



目には今にも溢れ出しそうな涙。

それを我慢するかの様に俺を睨む愛姫。



「あたしだって、鈍臭いってわかってるもん」



そんな事を膨れて言って。

俺にどうしろって言うの?



「迷惑ばっかりかけてるの、わかってるもん」



あー。
駄目だ。

可愛くて仕方ねぇ。



「碧君が呆れてるのも、わかってるもん」



だから上目遣いで見るなってーの。



「だから謝ってるじゃない、何回もっ」

「はいはい、わかったから泣くなって」



頭をポンポンと叩き、なだめる。

今の俺に出来る精一杯。



これ以上、近付いたら無理!



「泣いてないもん!
って、また子供扱いする。
あたしは碧君より年上なんだからねっ」



また、年上ぶるんだ?

今、泣きそうになってたくせに。
今も赤い顔して怒ってるくせに。




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