【中編】ひとつの愛
「俺より大人なんだったら
俺より仕事すれば?」
いつもより低い声。
自分でも言った後にヤバイって思った。
だけど
言ってしまった事より、俺の苛立ちの方が勝ってしまったんだ。
「そんな言い方しなくったって……いいじゃない」
じゃあ、お前も年上とか言うなよ。
これは一生変わる事がないんだから。
「愛姫が偉そうに言うからだろ?」
なるべく、いつもトーンで言ってみた。
だけど、愛姫はホッチキスを外す手を止めず、何も言い返してこない。
「怒ってんの?」
少し不安になって聞いてみる。
「……怒っては、ない」
「じゃあ何?」
モジモジした愛姫が、ホッチキスをイジりながら顔をあげた。
「碧君が意地悪言うから」
って。
怒ってんじゃん(笑)
フッと鼻で笑ってしまった俺に『また馬鹿にした』って今度は頬を膨らませた。