【中編】ひとつの愛
膨れたままの頬で残りの仕事を片付け始めた愛姫を見て、俺も作業に戻った。
今日は5時には帰れそうだ。
もっと沢山あったら良かったのに。
そうすれば、一緒に帰れたのにな。
「終わったぁ!」
嬉しそうな声に、俺は少し哀しくなった。
「今日は、俺が持って行くから」
「え……そだね」
書類を入れとじた封筒を、職員室へと持って行く途中、生徒会室の前に流湖さんと橘先生が居た。
「……下さい」
「嫌だった?」
ん?
何だか深刻な話?
俺に気付き、
ハッとした顔を見せる。
「碧く……ん?」
「はい?」
訳がわからず首を傾げた。
今、ホッとした顔をしたのは気のせいか?
「もう終わったの?」
「え? あぁ、今」
手に持つ封筒に目をやり頷く。
「そ。じゃあ、少ししたら迎えに行くから、それまで愛姫お願いね?」
『うん』と返事をして、止めた足を動かし、職員室へと向かった。