【中編】ひとつの愛
だから、わざと耳元で、
「本当にキスすんぞ」
なんて言ってやった。
愛姫の頬は赤くなり、それだけで笑えた。
そして、今度は体を揺する。
さすがにココまですれば起きるだろ?
俺なりに起きるタイミングを与えてたつもり。
なのに、どうして起きないんだよ?
このまま、ほっとけって事?
それとも、もっとデカイ声で起こせと?
俺に……
キスされていいって思ってんの?
これは俺の都合の良い考えか。
愛姫の頬に、ゆっくりと手をあてる。
唇を指でなぞる。
そっと顔を近付け……
頬にキスしようと思った。
後、少し。
ってとこで俺は躊躇してしまったんだ。
ゆっくり開く瞳に
『今、起きたふりするとこじゃねーから』
なんて冷静に思った俺の頭ん中とは裏腹に動かない体。