【中編】ひとつの愛




「チュウするの?」



絡む視線と動かない体。

俺が止まってる間に愛姫が俺を覗き込み聞く。

『はぁっ!?』

愛姫の言葉で驚いた俺の驚きの言葉は、出なかった。



俺がしようとしてた頬へのキスは、

愛姫からの唇へのキス

と変わってしまったから。



柔らかい唇がゆっくりと離れ、ほんの少しの隙間から上目遣いで俺を見る。

俺は一気に全身が熱くなって、そのまま動けない。



「チュウしちゃった……」



恥ずかしそうに微笑んだ愛姫。


その時、開いた図書室のドアから流湖さんが愛姫を呼ぶ声がした。


驚きで背筋が伸びた。



「あ! るっ、流湖ちゃん。
じゃあ、碧君。
また明日ね!」



チラッと俺見て目を逸らし、また俺を見て優しく笑った愛姫に、俺は口を片手で押さえ見下ろすしかなかった。



やっぱり、
あいつはわかってない。


俺の事からかったのか?
愛姫のくせに?



……俺の事、好きなんですか?







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