【中編】ひとつの愛
「碧君、来てくれたんだねっ」
気付くと俺の横でニッコリ微笑んでる愛姫。
なんだよ。
無視ばっかしてたくせにさ。
「あ、そうだ。向こうにね、美味しい…」
「愛姫さん」
愛姫が話そうとするのを、遮る声が後ろからした。
「はい? あ、斎藤さん。この間は、ありがとうございました」
そこには。
いかにも金持ちの坊ちゃんてなりの男がいて、愛姫も満面の笑みを見せた。
「いえいえ、こちらこそ。
遅くまでお付き合い頂いて。
あ、今大丈夫ですか?」
「えっ、あ…」
「じゃあな、愛姫」
一瞬、俺を見上げた愛姫に背中を向け歩き出した。
だからパーティーなんか来たくないんだ。
愛姫と俺は住む世界が違う。
川合家のパーティにくればわかってた。
今まで嫌ってくらい見てきた。
愛姫は、あんなでも“お壌様”だってこと。
なのに、どうして俺は来たんだろう。
少し離れたベンチで、1人座っていると流湖さんが隣に座った。