【中編】ひとつの愛



「機嫌悪そうな顔しちゃって」

「別にしてないっすよ」



流湖さんから目を逸らし答える。



「ふーん。愛姫、あの人とお見合いしたみたいだよー?」

「へっ!?」



驚き、流湖さんを見るとニヤッと不敵な笑み。


やられた。


流湖さんは、俺の気持ちを知っている唯一の人だから、こうして助言してくれるんだけど。


からかわれるのは好きじゃない。


はぁーっと小さな溜息をつくと、



「ごめんごめん。お見合いは嘘だけどー。
あの人が狙ってるのはマジっぽいよー。
碧、もっと素直になった方がいいんじゃない?」



そう少し哀しそうな笑顔を俺に向ける。



「流湖さん、何かあった?」



何となく、流湖さんの笑顔がいつもと違うから何気なく聞いただけだったのに。



「ん? ううん、何にも。
何にもなくて嫌になっちゃう」



そう言いながら立ち上がった流湖さんは

『ここに居てね』

と俺を残し歩き出してしまった。






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