【中編】ひとつの愛
「はぁっ……」
バタンッ
と大きな音を立てて閉まった、あたしの部屋のドア。
息の乱れを整えるあたしは背中を向けたままの碧君に問いかけた。
「碧君どうしたの?」
あれ?
聞こえてないのかな?
背中を向けたまま動かない。
「碧君?」
もう一度、名前を呼ぶと握ったままの手に少し力が入ったのがわかった。
「お前、あいつが本気でお前なんかを好きだとか思ってるわけ?」
「べ、別にそういうのじゃなくて……」
「お前みたいな馬鹿、本気になる奴なんているわけねーじゃん」
「なっ! そんな事……わかってるもん」
「ならっ!」
そう言って、やっと振り返ってくれた碧君。
だけど、
あたしの目には今にも溢れ出しそうな涙がいっぱいで。
それを見られるのが恥ずかしくて、少し俯いた。
わかってるもん。
年下の碧君にすら馬鹿にされる様な、あたしを本気で好きじゃないなんてわかってる。
100パーセント、家のお陰だって事も。
それでも告白されたり、優しくされたり。
でもね?
好き。
なんて嘘でも言われたりしたら嬉しいんだよ。
馬鹿な考え方かもしれないけど。