【中編】ひとつの愛
その時だった。
コンコンっと部屋をノックする音が聞こえ、背筋が延びた。
引き戻される現実。
「チェッ。いーとこだったのに、なぁ?」
ニヤリと笑った碧君と目が合い真っ赤に染まった頬。
手早くあたしの服を直しベットへ運ぶとドアを開けた。
「あ、碧。
愛姫の調子が悪いらしいから碧が運んでくれたって、流湖ちゃんに聞いて」
「少し熱っぽいみたいだけど大丈夫そうですよ」
パパの声だった。
流湖ちゃんが機転をきかせてくれたんだろう。
碧君に連れ去られたあたしは、碧君に運ばれた事になっていた。
流湖ちゃん見てたんだ……。
心配そうにあたしのそばに寄り、
「愛姫、主治医呼ぶか?
顔赤いみたいだし」
小さく顔を横に振り
『大丈夫』
と言うあたしに納得のいかない様子。
でも、
今はパパと目が合わせれない。
凄く悪い事をしたみたいで。
それを
“気持ちいい”
と思った自分が汚く感じちゃって。
ごめんね……パパ。