【中編】ひとつの愛
「人込みに酔ったんじゃないっすか?
俺、そばについてるんで陽呂さんは行って下さいよ。
何かあったらスグ呼びますから」
助け舟を出す様に、にこやかな笑顔で言う碧君。
「そうか。でも悪いな。
うん、碧に任せれば安心だしな……頼むよ」
いやいやいや、パパ!
今はパパの目見れないし、行ってくれた方が嬉しいけど。
碧君に任せるのは間違ってると思う。
こうなった原因は、パパの信用した碧君なんだよっ!
パパ見る目ないよ!?
「だっ、大丈夫。1人で…」
そう言ったのに。
「愛姫、遠慮しないでいいよ。
俺、パーティーとか慣れてないから抜けれて助かるし、ねっ?」
なんて普段聞いた事もない声で、笑いかけた。
それを見て安心した表情を見せたパパは
『寝てるんだよ?』
と優しくあたしの頭を撫で部屋から出て行ってしまった。
パパぁぁぁ~!
パタンと閉まったドアに鍵をかけると、
ゆっくり振り返った碧君の顔は、いつもの意地悪な笑顔だった。