【中編】ひとつの愛
でもね。
昔から碧君の手は、いつもあたしより少し冷たくて。
それが気持ち良くて安心するんだ。
――手の冷たい人は心が温かいから。
これは誰が言っていたんだったかな?
――手の温かいあたしは、心が冷たいの?
――ううん、手の温かい人は、心も温かいんだよ。
こんな子供騙しを
優しく笑って言ってくれた人は誰……
だったんだろう?
「ごめんな、愛姫」
遠くの方で、碧君の小さく呟く声が聞こえた。
本当だよ。
ねぇ、どうしてあんな事をしたの?
ねぇ、どうして謝るの?
ねぇ、碧君。