【中編】ひとつの愛
「流湖さん、愛姫は?」
「あれ? さっきまで居たのになぁ~」
流湖さんのわざとらしい演技は、愛姫が隠れている時。
不敵な笑みを零しながらも流湖さんの演技は続く。
「どうしたのー? 愛姫に何か用?」
わざとらしい大声に、俺も知らないふりをして話す。
「今日は水曜なんで、図書当番なんすよねぇ」
「あ~ら大変。見つけたら言っておくわねー」
「……お願いします」
最後の方は、ちょっと恥ずかしくなって声を小さくして頼んだ。
あの日、
愛姫が寝ている間、すっと隣に居たんだ。
数時間後、目覚めた愛姫は
『あ、碧君いてくれたんだぁ』
って可愛い笑みを見せた。
それだけで、真っ赤になってしまう自分が情けなくて。
さっきまで、あんな事をしていた癖に……
って自分で自分がわからなくなってしまう。
起きた愛姫はいつも通りのままだったのに。
あの日は、いつも通りだったのに。
次の日、学校へ行くと……こうやって避けられていた。