【中編】ひとつの愛
確かに、避けられる様な事はした。
嫌われる様な事も……した。
あ、でも初めから嫌われてるっけ。
だけど、ここまで露骨ってどーなのよ?
廊下で擦れ違って、目まで合ってるのに走って逃げるし。
今日だって当番を休むし。
教室まで行っても隠れるし。
言いたい事があるなら言ってくれた方が……
いや。
『大嫌い』なんて言われたらどうすんだ?
だぁー!
自分で自分が情けない。
情けなくて嫌になる。
だから、俺は愛姫に男として見てもらえねーんじゃん。
だから、愛姫が俺を好きになってくれねーんじゃん。
図書室に戻り、静かに作業をこなした。
いつもみたいに、キャーって叫び声も聞こえなくて。
ガタガタと煩い脚立の音もしない。
隣で、俺を覗き込みながら飴を差し出す愛姫がいないんだ。
誰も居ない図書室はこんなに静かなの?
いつもは煩くて寝る事だって出来ないのに。