【中編】ひとつの愛
次の金曜日も、図書室のドア開けるとやっぱり愛姫の姿はなかった。
そのまま開けたドアを、もう一度閉め走り出した。
勿論、愛姫の教室。
下校時間を過ぎた教室には誰も居なかった。
あー、流湖さんも生徒会行っちまったか。
どーっすかなぁ。
そう思って何気なく視線を落とした机。
あ……愛姫のだ。
机の横にかけられている鞄でわかった。
その反対側には、でっかいマスコット人形がジャラジャラとついた通用鞄もある。
って、事は学校に居るのか。
そう思い、生徒会室へと向かって教室を出て階段を下りた時だった。
ゆっくり上がってくる愛姫と目が合った。
声をかけ様とした瞬間、驚いた顔を見せた愛姫は来た道を走って戻る。
「あ、ま……ちょっ、おい!」
慌てて追いかける。
勿論、トロイ愛姫が俺から逃げ切れるわけもなく簡単に掴めた腕。
「ちょっ……離してよ、碧君」
掴まれた腕を必死に手で剥ぎ取ろうとするけど愛姫の力なんかで離すわけがない。