【中編】ひとつの愛
「……だから」
「へ?」
「俺、お前の事好きだから」
「えぇ!?」
顔を上げ目を大きくさせて驚いた愛姫が、眉間に皺を寄せ首を傾げた。
その表情でハッとした俺は、愛姫から目を逸らした。
てか、言っちまってるじゃん。
俺……好きだって……。
「え? あ、碧君? え? どういう事!?」
掴んだ腕を離してやったのに。
今度は、愛姫が俺の腕を掴んだ。
そして何度も何度も同じ質問を繰り返す。
「碧君って……あたしの事、好きなの?」
ピンクに染めた頬で、俺を見上げまだ首を傾げてる。
チラッとその顔を見た俺は、だから言ってんだろ、馬鹿。と心の中で思った。
はぁー。
何で言っちまったんだろう。
今すぐここから逃げ出したい気分だし。
今なら女が告白して逃げる気持ちがちょっとわかる。