【中編】ひとつの愛
「ご、ごめんね。碧君っ」
そう謝りながら、一冊を拾おうと手を伸ばしたら、碧君も同じ本に手を伸ばし触れた指先。
その瞬間、汚い物を触るかの様にバッと手を引っ込めた碧君に驚いて顔を見た。
「お前、図書委員のくせに本を大切にしなさ過ぎ」
一瞬、困った顔を見せたように見えた碧君は、いつもの碧君で。
……あたし、何意味わかんない事思ってんだろ。
「ち、違うもん。落としちゃっただけだもん」
「毎回だけど、ねぇ」
その隙に全部拾い終わった碧君は、チラッとあたしを見下ろすと素早く本を本棚にしまい行ってしまった。