【中編】ひとつの愛
「愛姫ー!」
後ろから、あたしを呼ぶ声と同時に鳴る軽やかなクラクション。
振り返ると、ママが車から顔を出し大きく手を振っていた。
流湖ちゃんと目を合わせ、車へと近付いた。
「ママどうしたの?」
「仕事が早く終ったの。そしたら2人が見えたから」
そう、にっこりと微笑んだママ。
「おば様、お久しぶりです」
「流湖ちゃん、久しぶり。いつも悪いねー、愛姫送ってもらっちゃって」
「いえ、帰り道同じですから」
「あ、ほら車乗って? 送って行くしね♪」
ママに言われてドアを開け、車へと乗り込んだあたし。
流湖ちゃんも乗るように手招きをしたのに、申し訳なさそうに首を横に振ると、
「すみません。私、用事があるんでここで」
「え? 用事? あ、そこまで送るよ。ね、ママ?」
「えぇ、そうよ。流湖ちゃん遠慮しないで乗って?」
ママと口を揃えるかのように何度も言ったのに、流湖ちゃんは
『ここからすぐですから』
それだけ言うと、行ってしまったんだ。