【中編】ひとつの愛



「あー、愛姫、お茶でも飲もうか」

「え? ……うん」



家まで後5分くらいの距離。


それなのに、ママがこんな風に言う時はあたしの変化に気づいてる時なんだろうな。っていう事に、最近気がついた。


そんな時は、仕事が忙しくても時間を作ってくれるんだ。
そして、それとなく話を聞いてくれる。


多分、今日パパは仕事で帰って来ないかも……しれないね(笑)

ママの事だから、全部パパに仕事を任せて来てるんだろうし。

でも、パパの事だからそれを怒らず笑顔でママを見送ってるんだろうなー。



「何ニヤケてるの? 愛姫」

「え!? ううんっ! 何でもないっ」



そんなパパとママが羨ましいな。って思ってたら自然と顔がニヤケちゃったよ。

少し変な顔をしたママに、笑顔で返した。



寄った場所は、ママの行きつけのカフェで、光が沢山差し込む窓際の席に座った。

ここは、ママが悩んだ時や落ち込んだ時に昔から来てる場所らしくて、ここに来ると元気になれるんだって言ってた気がする。



ママは、あたしが悩んでるって気づいてたんだよね。
やっぱりママは凄いなぁ。



「ねー、ママ?」

「なぁに?」



座ってから、もう20分近く。

学校の話や、流湖ちゃんの話。
仕事の話なんかを喋ってるだけで、ママは何も聞いてはこない。


これが、あたしのママ。


あたしが言うまでは、無理に聞こうとはしないんだ。



「ママがパパを好きって思った……きっかけ? って何?」



そう“きっかけ”それがわからないんだ。


あたしは、碧君の事は好き、だと思う。
でも恋愛の好きかどうかなんて、わからない。

どこからが恋愛になるの?




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