【中編】ひとつの愛



「はっあ~~~」



やっぱり今日も大きな溜息を吐く。

少し離れた場所では愛姫が尻餅を付いて、そのままの体勢で固まっている。



カード整理の手を止め、立ち上がりその場所へと向かい、散乱した本を一冊ずつ拾い始めた。



「あ、碧君……」

「何してんの?」



えへへ。と可愛く笑った愛姫を見て、また溜息が零れた。



「上のは俺が取るって前から言ってんだろ?」

「んー。そうなんだけど……出来るかな? って思ってね?」

「全然、出来てないから」

「だよねー……」



そう言いながら、散らばった本を見て笑う愛姫。



「わかったなら、次からは言えよ?」

「……」



愛姫の顔を見ると驚いた顔をして俺を見つめていた。



「何?」

「何か…碧君が優しくて気持ち悪い」



はぁ!?

んだ、それ。



「今までなら、俺がする。とか言っちゃって。あたしの事を邪魔って顔してたのに」



指で、目尻を吊り上げ俺の顔マネをしながら言う。



< 67 / 159 >

この作品をシェア

pagetop