【中編】ひとつの愛



俺ってどんな顔してんだよ。



「だから碧君が優しくて気持ち悪い」

「別に……いつもと一緒。てか早く拾えよ」



確かに、どうしていいかわからないから変だったけど優しくなったつもりはない。

いや、優しくなってたのか俺?



「なーんか、変なの。今までの碧君ならもっと言い返して来たのにさー」



本を拾いながら、呟いた愛姫をチラッと見て、



「今までと一緒にしろ。って言いたいの?」



つい本音が出てしまった。



「え?」



かすれた声が聞こえるか聞こえないか、その声に被さる様に



「俺、愛姫が好きだって告白したよな?
なら今まで通りなんて無理だろ。
それくらいわかれよ」



いつもより低い声で、言ってしまったんだ。



失敗した。

言った後に思った。



こんな事言って、愛姫を困らせるだけなのに。
もっと今まで通りになんてならなくなるのに。

わかってたけど、これが俺の本音。




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