【中編】ひとつの愛
えっ? 何?
2人の光景を見て、一瞬にして固まってしまったあたしに
「って事で頑張ってね」
流湖ちゃんは、手をヒラヒラと振り図書室から出て行ってしまった。
「んっとに、流湖さんは」
見送るあたしの隣でブツブツ言う。
まだ少し赤い顔をした碧君を見て、
チクッ
て胸の奥が痛くなった。
碧君は、流湖ちゃんが好きなんだと思う。
流湖ちゃんと話す碧君は、顔が赤くなる時が多いもん。
それに明らかに、あたしと流湖ちゃんの態度が違い過ぎる。
だけど流湖ちゃんには彼氏がいる。
碧君は知ってるのかなぁ?
うーん……何かモヤモヤする胸の奥。
「……いっ! おいっ!」
「はっ、はい!?」
耳元で叫ばれたあたしは、大声で返事をした。
しかも敬語で。
「ボーっとすんなよ」
呆れた顔で指差すカードの山。
引き戻された現実。
そうだったぁ。
これ終わらなきゃ帰れないんだった。
サッサッと終わらせなきゃね!
よしっ! と気合を入れたら、
「てか、早くしてくんない?」
と冷たい言葉が返ってきた。