【中編】ひとつの愛
慌て『予習しなきゃっ』と教室へ走っと行く愛姫。
「また考えてたの?」
「……っ」
ニヤッと笑う栗野君に言葉が詰まる。
どうしてか栗野君だけは、気付く。
私の嘘の作り上げられた笑顔。
だから栗野君と居る時は、なるべく先生の話題に触れたくない。
「別に?」
「ふーん」
気にしてないって感じで答えても意味深な笑みを見せる。
「あ、コレ。
生徒会室へ持って行かなきゃ。
じゃあね、栗野君」
思い出した資料をチラチラと振りながら、その場を立ち去った。
栗野君は変わってる。
イマイチよくわからないんだもん。
私に『俺と付き合えばいいのに』とは言うけど“好き”とは言った事がない。
初めはからかってるんだと思ってたけど、毎日のように声をかけてくるからし。