【中編】ひとつの愛



散らばったカードをしゃがんで拾う碧君。

それを見て慌て拾う、あたし。


もう、どうしてこう鈍臭いんだろう?


何だか泣けてきたよ。


無言でカードを拾う碧君の背中をジーッと見つめた。



碧君もうんざりしてるんだろうな。

こんなあたしに……。



「手」

「てぇ?」



突然振り返った碧君は、やっぱり大きな溜息をついてて。

あたしを睨んだ。



「てぇ? じゃなくて。
手動かせって」

「へ? あぁ! うん」



そばにあるカードをまた拾い始めた。



「ごっ、ごめんね?」



俯きながら言う、あたしに『別に』とだけ返す。


全部拾い終わったカードを軽々と持ち、図書室を出て行ってしまう碧君を眺めてるだけだった。



「あたし……駄目だなぁ」



机にバタッと倒れ込み、自分自身に大きな溜息。





< 9 / 159 >

この作品をシェア

pagetop