【中編】ひとつの愛
「橘先生。
川合さん、山口さんの場所を聞いたんですか?」
「あぁ。そうだよ」
「愛姫ちゃんも馬鹿ですよね。
先生に聞いても、
わかる時の方が少ないのに」
意味ありげな顔で、笑いながら言う。
そんな栗野を真っ直ぐに見つめた。
「生徒会の顧問だからじゃないかな?」
「基本、顧問は生徒会長と話し合うものですし。
他のメンバーには、生徒会長から説明されてますよ?」
真っ直ぐ見つめてた俺が、一瞬逸らしてしまうくらい強い目で見つめ返された。
確かに、その通りだ。
俺と流湖が、生徒会で直接関わる事は少ない。
同じ空間を一緒に使う、そう言った方が正しいくらいに流湖との関わりはない。
栗野は、何か知っているのか?
「橘先生どうかしました?
顔が強張ってますよ?」
「えっ? いや、考え事を」
『教師は大変ですよね』と言いながら俺の隣を通り過ぎた。