【中編】ひとつの愛
『橘先生、今日合同会議なんで生徒会室の鍵お願いしますね』
放課後、生徒会長が俺に言いに来た。
うちの大学や姉妹高との合同会議は月に1度ある。
それに参加するのは生徒会長の大切な役割だ。
だから、こんな時は俺が生徒会長の代わり。
めんどくさ……。
そう思いながら、生徒会室のドアを開いた。
「あ……」
「え……」
視線をあげた瞬間、入って来た姿に小さく声を漏らしてしまった。
同じ様に声を漏らした流湖が先に目を逸らした。
「山口さん、他の皆は?」
動揺を悟られない様に、いつもより低い声で話した。
遊びに付き合うとか思いながら、何でこんなに動揺してるんだ?
いい大人が何してんだよ。
「今日は生徒会長が留守なんで、皆早く終わらせて帰っちゃいましたよ?」
「は? 帰った?」
「はい……?」
「何だ、じゃあ俺来る必要なかったのかよ。だりぃ」
そう言ってしまった後に、ハッとした。
やべぇ。
素で喋っちまった。