【中編】ひとつの愛
少しの沈黙の後、アハッと笑う声が静かな生徒会室に響いた。
流湖の笑い声だ。
「そっちの方が先生らしいですよ?」
笑いながら、少し溜めた涙を拭い『真面目な教師は似合わない』と続けた。
失礼な奴だ。
俺が“真面目な先生”を演じてる理由もしらないでさ?
まだ若い俺は、上の先生方から結構言われる。
『必要以外に生徒と親密にならないで下さいよ?
“もしも”なんて洒落にならないですからね』
そう、だから流湖との事だって。
俺だけじゃなく、流湖の人生だって変わってしまう。
ただの遊びの恋愛だろ?
バレたらっていう恐怖が楽しいんだろう?
人間は隠くす程、燃えるものなんだ。
たったそれだけで、全てが変わる事なんて流湖はわかってない。
恋愛ごっこを楽しむのは勝手だけど
“もしも”
がバレた時、お前はどうするつもりだったんだ?
なぁ、流湖?
「先生?」
笑っていた流湖が俺を覗き込んでいた。
もしかすると俺は手遅れなのかもしれないな。
流湖と居ると、ついそんな事ばかり考えてしまう。