【中編】ひとつの愛
「え、あーそうかもな?」
「へっ?」
「別に真面目ぶる必要なんてないのかもしれないな」
そうだよ。
別に、流湖の前で真面目ぶる必要なんてないよな?
だって、もう流湖とは何の関係もないし。
他の生徒なんて女としてみていない。
どうこうなる予定なんてこれっぽちもない。
それなら、別に真面目ぶって高感度をあげる必要性もなければ、意味もないんだから。
俺が好きであろうがなかろうが、流湖にとってはもう俺は過去の話なんだ。
「山口さん……いや、山口はさ?」
「はっ、はい?」
「栗野と上手くいってるの?」
「え?」
驚いた表情を見せ、ゆっくりと視線を床へ向けた。
「付き合ってんだろ?」
俺は何でこんな事を聞いてるんだろう?
でも口が止まらない。
どんどん嫌な方向へと勝手に動いてしまう。
「栗野は大人だよな。いい奴だし」
「……ない」
「へ?」
小さく呟いた流湖の声が聞こえなかった。
「先生には、関係ないです」
顔をあげ、キッと俺を睨むとそのまま隣を通り過ぎ生徒会室を出ようとした。