【中編】ひとつの愛
通り過ぎる瞬間、いつもなら伸ばせない手がさっきの口と同じ様に勝手に動いた。
普通なら腕を掴んだりするんだろう。
なのに俺は、
髪を掴んでしまった。
「いった! 何するんですか!?」
「え? あ、悪い」
長くサラサラの髪を、そっと離した。
髪を掌で整える流湖の手首を掴み、俺の胸へと引き寄せた。
「ちょっ……せん…せい?」
「黙って?」
何かが俺の中で爆発したんだろうか?
引き寄せたくなった。
抱きしめたくなった。
流湖をもっと近くで感じたかったんだ。
でも、すぐに離れてしまった体。
「何考えてるんですか!」
そう怒ってドアを開け生徒会室から出た
流湖の後姿を見て……
もう一度引き寄せ、
キスをした。