宝石よりも
闇夜にキスを
窓を開けると、すぐに美夜が顔を見せた。
ベッドの上にちょこんと座って、嬉しそうに微笑む。
「今日はね、シフォンケーキを焼いてみたの」
そう言ってリビングに俺を連れていき、シフォンケーキを差し出した。
「へー、意外。お菓子作れるんだ」
とからかえば、美夜はむぅっとして頬を膨らませた。
「私だってお菓子くらい作れるよ」
ごめん、だって
美夜はトロいから、
お菓子作っても失敗すると思ったんだ
とは言わないでおく。
「冗談だよ」
美夜のまねをして、柔らかいシフォンケーキにフォークを突き刺した。
ふわりと柔らかい食感。
優しい甘さが口に広がる。
「美味しい」
俺がそう言うと、美夜は綿飴になった。
「ありがとう」