宝石よりも
さっと身を翻して窓へ駆けよった時。
ガタ、ガタン!
玄関から大きな物音がし、振り返った。
帰ってきているはずなのに、玄関の方に明かりはついていない。
耳を澄ますと、微かに人の声が聞こえてきた。
「い、嫌、お願い、離して」
「大人しくしてろ、殺すぞ」
切れ切れの女の子の声に、低い男の声。
うーん。
もしかしてこの部屋の住人さん、犯罪に巻き込まれてる?
ま、俺には関係ないや。
ひょい、と窓枠に足をかけたが、女の子のすすり泣きが耳を捕らえた。
……全く。
今回だけだよ、特別。