宝石よりも
「……七海に会いに行ったのか?」
ザザン、と波が浜辺に打ち寄せた。
「さぁね」
打ち寄せる波を見つめて、それだけ言った。
「さぁねって、お前な……」
直樹は呆れたように眉を寄せた。
俺は直樹を無視してそばにあった貝殻を拾いあげ、太陽の光に当てた。
……桜貝、かな。
直樹はそんな俺を見てはぁ、とため息をつく。
「七海はお前に会いたいと思うけどな」
「やめてくれない?」
俺は貝を砂の上に投げ捨て、勢いよく立ち上がった。
「直樹には関係ないよ」
そう言って笑顔を向ければ、直樹は黙りこくった。
わかってるんだよ、そんなことは。
俺は黙ったままの直樹に背を向け、海岸をあとにした。