宝石よりも


「あ、そうだ」



カイは何か思い出したらしく、ポケットをごそごそ探り出した。


ハテナマークを浮かべながらカイに近づくと、カイは優しく目を細めた。



「はい」



コロン、と。

渡されたものは、小さなピンク色の貝殻。



「これ……」



「今日、海岸で拾ったんだ。綺麗だったから美夜にあげようと思ったんだけど」



邪魔だったら捨てて、と言いながらソファから降りるカイに、私は飛びつきそうになった。



「ありがとう。私、海に行ったことないから嬉しい!」



私の言葉に、伸びをしていたカイが目を丸くした。



「え。海行ったことないの?」



わりと海に近いのに有り得ない、とでも言いたげなカイ。



……だって、あまり遠出すると叱られてたんだもん。


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