宝石よりも
不透明な海
「あら、カイちゃん」
ちょっと体格のいい、気のよさそうなおばさんが話しかけてきた。
彼女は確か俺の家の近所の、でっかい犬を飼っている家の人。
あの犬、俺を見ると吠えてくるから苦手なんだよなぁ……
俺は林檎の入った箱を抱えたまま、軽く会釈する。
「今日もバイト?大変ねぇ」
「ええ、まぁ」
おばさんは少し同情の色を顔に浮かべて、俺の抱えている箱から林檎をひとつとった。
「じゃあ、これもらおうかしら」
「ありがとうございます」
俺はにこりと営業スマイルで、林檎のお金をおばさんから受け取った。