宝石よりも
「カイッ!!」
叫ぶ声がし、俺と美夜は声のした方に顔を向けた。
「……ナオ?」
そこには、眉を吊り上げた険しい表情の直樹がいた。
直樹は俺のところまで砂を蹴って走ってくると、思いきり俺を殴り飛ばした。
鈍い痛みとともに、俺は砂浜に倒れこんだ。
「……痛いよ、ナオ」
口元を拭いながら、むくりと砂浜から体を起こす。
美夜を見ると、怯えた表情で立ち尽くし、ただ俺たちを見守っていた。
口の中に鉄の味がじわりと広がってきた。
どっか切れたかな。
「お前……」
直樹が俺のそばに膝をつき、襟首を掴んできた。
痛みに顔を歪ませるも、直樹はそんなことは構わないといった風で俺を睨みつける。
「お前は、自分が何してるかわかってんのか」
直樹の声は、怒りに震えている。
俺は直樹を見つめ、ふっと笑った。