宝石よりも
真っ赤なリンゴを鞄に潜ませて
俺が足を運んだのは、白い大きな建物。
薬品のにおいが漂う空間。
楽しそうに会話しながら、子どもが乗っている車椅子を押す親。
友達とトランプをして遊んでいる、パジャマ姿の子どもたち。
階段を上がり、廊下の一番奥にある一室。
その扉を開くのに、俺はいくらか躊躇った。
俺が入ったら、ここは汚れてしまうような気がした。
はぁ、とため息をつき、意を決して扉をそっと開く。
窓から光が差し込む明るい部屋。
目に飛び込んだのは、白いベッドで眠っている少女。